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『遙かなる星』

 ヤン・デ・ハートックの名作『遙かなる星』(原題は『The Inspector』)を読みました。

 ストーリーは、第二次世界大戦直後、アウシュビッツから解放された身寄りのないユダヤ人の若い女性アンナを、アムステルダム警察捜査課の窓際族警部ユングマンがナチス残党の人身売買組織から助け出し、建国中のイスラエルへ送り届ける・・・というものです。

 もう、困難困難また困難、絶望絶望また絶望、内憂外患、自然の脅威も含めて敵だらけ・・・という中、2人の旅はギリギリの状況でロンドン・オランダ・ベルギー・フランス・モロッコ・・・と続きます。アクションシーンはありませんが、読んでいるこちらが息苦しくなる程の緊張感の連続です。

 主人公のユングマンは決してスーパーマンではなく、現代日本にも居そうな悩み多き中年男性で、アンナはナチスの人体実験で体を蝕まれ極度に衰弱しつつも、それをひた隠しにする健気で賢くかわいらしい女性として描かれています。ユングマンの心理描写はかなりリアルです。

 好きなシーンは、アンナに心配かけないようにいつも気を張っていたユングマンが、ついに耐え切れなくなって大泣きしてしまい、アンナがそれをわかっていて優しく受け止めてあげているというところです。もらい泣きしそうでした・・・。
 また最後の28章目を読み終えた後は、しばらく放心状態でした。(ラストはなんとも言えない重いものです。)

 ミステリー作家の逢坂剛さんがこの本をいろいろなところでお薦めされております。(実は私も氏の書評を読んでこの本が読みたくなりました。)初版は32年前の昭和49年で既に絶版らしいのですが、読書の秋ですし、機会があったら是非読んでみて下さい。

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